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萌ちゃん用瞳テクスチャ

お弁当 あれは夕立に見舞われた不運な日のことだった。 その日は仕事の段取りも絶妙に噛み合うことがなく、お昼時を逃し、かつ次の場所へと向かう必要のあった私は、とある駅で駅弁を求めることとなった。 もうおやつ時へと近づく頃合、観光客で賑わうほどの駅でありながらも、売店のワゴンにはたった一つのおにぎり弁当しかなかった。 私はやむを得まいと決心したが、同様の覚悟を決めつつある一人の女性が店員へ尋ねた。 「このおにぎりの中身はなんですか?」 随分と長く商売をしてきたのだろう。初老に近そうな店員が少し眉を伏せて答える。 「ごめんなさいね。中身は梅なんですよ。」 ほんの一瞬目を見開いた女性は小さな声とともに会釈をし、その場を去った。 少し離れた位置でやり取りを見ていた私は、浮いた足をそのまま90度回転させ、さも目的地は元々違ったかのような顔で歩き、急ぎもしない改札を抜けた。 …… しかしなぜなのだろう。 あの場にはきっと、梅干し好きは一人としていなかったのだ。

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お弁当 あれは夕立に見舞われた不運な日のことだった。 その日は仕事の段取りも絶妙に噛み合うことがなく、お昼時を逃し、かつ次の場所へと向かう必要のあった私は、とある駅で駅弁を求めることとなった。 もうおやつ時へと近づく頃合、観光客で賑わうほどの駅でありながらも、売店のワゴンにはたった一つのおにぎり弁当しかなかった。 私はやむを得まいと決心したが、同様の覚悟を決めつつある一人の女性が店員へ尋ねた。 「このおにぎりの中身はなんですか?」 随分と長く商売をしてきたのだろう。初老に近そうな店員が少し眉を伏せて答える。 「ごめんなさいね。中身は梅なんですよ。」 ほんの一瞬目を見開いた女性は小さな声とともに会釈をし、その場を去った。 少し離れた位置でやり取りを見ていた私は、浮いた足をそのまま90度回転させ、さも目的地は元々違ったかのような顔で歩き、急ぎもしない改札を抜けた。 …… しかしなぜなのだろう。 あの場にはきっと、梅干し好きは一人としていなかったのだ。

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